知っておきたいお肌の情報

皮膚の構造

皮膚のしくみ

顔の皮膚は私たちにとって気になるところですから、「肌悩み」が生じた時の理解のために皮膚の仕組みや「顔の皮膚」の特徴を知っておくことは大切だろうと思います。

図1.皮膚の構造

表1.角層の厚さ(細胞層数)

図2.皮膚の構造

図3.表皮

表2.皮膚の保湿


まず皮膚の仕組みを見てみましょう。皮膚は、3層構造になっており、一番上の層が「表皮」、その下が「真皮」、最下層が「皮下組織」です(図1)(図2)。
皮膚の表面をよく見てみますと、大小の細かい溝が交差しており、この溝を「皮溝」とよびます。皮溝に囲まれている部分を「皮丘」と呼び、皮溝と皮丘の形がきれいに整っていて水分が保たれていますとキメの細かい肌と表現されるわけです。


皮溝と皮溝の交わるところに毛が生えており、皮丘には汗の穴が開いています。
皮膚の厚さは、体の部位によって異なっていますが、表皮で0.041mmから0.268mm、真皮まで含めると1.19mmから2.40mmあるといわれています。その中でも一番薄い皮膚は、まぶたや陰部です。(表1)

 

 皮膚の一番上の層は「表皮」ですが、拡大して見てみますと、表皮も層構造になっています。上の方から、「角層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」と呼ばれます(図3)。
この表皮では、一番下の基底層から新しい細胞が生まれ、古い細胞を上に押し上げるように新陳代謝を繰り返しており、最後に角層となって垢となり私たちの体から落ちていきます。これらの皮膚の生まれ変わりを一般にターンオーバーと呼び、約45日といわれています。

 

 表皮の中で最近注目を浴びているのが表皮の一番上にある角層です。皮膚のバリア機能ということばを聞かれることが多いと思いますが、そのバリア機能の中心が角層です。以前は角層といえば、もうすぐ垢となって落ちていくだけの皮膚の成れの果てといった感じでしたが、最近では皮膚の潤いに関わる重要な部位として注目を浴びています。さらには角層脱落により基底細胞への増殖シグナルが生じ、角層は表皮や表皮下の皮膚構築の決定と維持に中心的役割を果たすとも言われています。


さらに角層の話を続けます。角層では皮膚表面に、弱酸性の皮脂膜を形成し、外的刺激からの防御、水分の保持をしてくれています。角層の保湿力を構成するものが、「皮脂」「角質細胞間脂質」「天然保湿因子」の3要素です(表2)。皮脂は毛包に付属する皮脂腺から分泌されます。角質細胞間脂質は角層の細胞と細胞の間を埋める脂質でその50%をセラミドが占めています。また天然保湿因子は角質細胞内に存在しアミノ酸・ミネラル等で構成されています。これら3要素による角層の水分保持能が皮膚の美しさを決める重要な要素となるわけで、垢となって落ちていくだけだと思われていた角層が実は大きなはたらきをしていることがわかります。

 

 表皮の一番下にあるのが、基底層ですが、そこにはメラノサイトが存在し、メラニンを作っています。メラニンといえば、女性の大敵「しみ」の原因と考えてしまいがちですが、メラノサイトがメラニンを作ってくれるからこそ、私たちの皮膚は紫外線から守られています。メラノサイトの数は背中や胸に比べ、顔には多く存在します。そのほか表皮には免疫に関与するといわれているランゲルハンス細胞が存在します(図3)。


さて、表皮の下の「真皮」ですが、厚さは表皮の約10倍あり、ここには膠原線維、弾性線維、線維芽細胞、そして線維の間を埋めている基質があり、それらは皮膚を支え皮膚の弾力に重要な役割を担っています。その中でも膠原線維は真皮の70%を占めています。最近話題のコラーゲンは体の全蛋白質の約3分の1を占め、臓器の支持、補強、結合、境界形成などの役目をはたしています。その分布は皮膚に40%、骨・軟骨に10~20%、血管に7~8%存在するといわれています。また皮膚の乾燥重量の70%をコラーゲンが占めるといわれています。年齢とともに、私たちの皮膚の張りがなくなるのは、膠原線維や弾性線維に変化が生じてくるからです。また線維の間を埋めている基質にはヒアルロン酸等が含まれ潤いを与えており、コラーゲンやヒアルロン酸が話題になるのはこのためです。
しかし、飲んだり塗ったりしたコラーゲンやヒアルロン酸がそのまま皮膚のコラーゲンやヒアルロン酸になるわけではないので使い方はよく考えましょう。


また、真皮には血管が豊富にあり表皮に栄養をあたえます。栄養が血管によって運ばれるわけですから、私たちの皮膚にとって外からだけのお手入れだけではなく、体の内から適切な栄養を皮膚に運ぶことが大切であると言えます。
その他真皮には、汗腺、毛根、神経線維、立毛筋、細胞成分等が存在します。毛根には皮脂腺が付属しており、皮膚の保湿に重要な皮脂を分泌してくれます。しかし、思春期になって皮脂の分泌が盛んになりますと毛包の角化異常や毛包内細菌の増殖が加わって「にきび」を生じてきます。皮脂腺は手のひらと足の裏以外の全身に分布していますが、部位によって、皮脂腺の多いところと、少ないところがあり、密度が高いのは頭・額・鼻近傍で400~900個/㎠それ以外で平均100個/㎠であるといわれています。


皮膚の一番下層は皮下組織といわれ、真皮と筋膜の間に存在し、脂肪細胞で占められています。皮下組織は、保温、外力に対する緩衝作用、全身のエネルギー代謝の一役を担っています。


汗腺についても少しふれておきたいと思います。汗腺にはエクリン汗腺と、アポクリン汗腺があり、程よい汗の分泌は皮膚にうるおいを与えます(図2)。全身に分布するのがエクリン汗腺で、寒冷地生まれの日本人で約216.6万、熱帯地生まれで約296.1万の平均能動汗腺数であると報告されています。アポクリン汗腺の方は思春期から発達しまして、わきの下や、乳輪、陰部に分布しています。

皮膚のはたらき

皮膚は私たちの体を、外界から守ってくれ、骨や筋肉、内臓を収容してくれる臓器でもあります。
皮膚の機能としては、外力に対してはクッション作用があったり、病原菌や、物理的・化学的有害物質の侵入を防いでくれたり、紫外線に対して防御的に働いてくれます。そして触覚・痛覚・温覚・冷覚の知覚を脳に伝えて、さらに汗や皮脂が分泌され肌を潤し、体温調節もしてくれます。

顔の皮膚の特徴

さて、ここまで私たちの皮膚のしくみやはたらきをみてきましたが、「顔の皮膚」の特徴をもう少し詳しくみてみましょう。

顔の皮膚の特徴

  • 1.衣服で覆うことがないので紫外線などの外界の刺激を受けやすい
  • 2.光老化をきたしやすい
  • 3.皮膚の厚さが薄い
  • 4.角層水分量が多い(腹部の2〜3倍)
  • 5.経表皮水分喪失量(TEWL)の高値
  • 6.メラノサイトの数が多い
  • 7.皮脂腺の数が多く皮脂量も多い
  • 8.表情筋が直接皮膚に付着しており感情を表現する

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